【書籍解説】現役商社マンが語る!!「誰がアパレルを殺すのか~第1章~」
こんにちは。
ふく たびおです。
前回に引き続き「誰がアパレルを殺すのか」の解説を行っていきます。
今回は第1章~崩れ去る”内輪の理論”~についてです。
1、負のサプライチェーン
上記画像はとある衣料品の焼却処分倉庫です。
負のサプライチェーンの象徴とも言えるでしょう。
バブル崩壊後、それまで業界を席捲していた高単価のDCブランドが売れなくなり、
代わりに国内のユニクロや欧米系のH&MやZARAのファストファッションが台頭しました。
それらの強さの本質は川上(糸/生地メーカー)から川下(小売店)までの
サプライチェーンの全てを把握していることであるにも関わらず、海外での大量生産による仕入れコスト低減のみを切り取り、海外生産へのシフトが激化しました。
当然のことですが、大量に作るということは、大量に売る必要を伴います。
その為、各社はマスの売れ筋を追いかけ模倣することに奔走し、売れ筋を作りあげるチャレンジをすることを辞めました。その結果、招かれたのが商品の同質化です。
当然、消費者は「買いたい服が無い」と感じ始めたのです。
この大量生産により、1991年に約20億点だった日本の衣料品の供給量は2013年には約40億点と倍に膨れ上がりました。
一方で市場規模はというと、1991年の約15.3兆円から2013年には10.5兆円と減少しています。
「供給量は増えているのに、売れる数量は減っていく」
このような負のサプライチェーンを象徴するアパレルの墓場が、焼却処分場や不良在庫を数百円の相場で買い取るバッタ屋です。
※商品単価が安くなったことも市場規模減の一因ではあります。
まず、この現状を理解することが新たな一歩を踏み出すのに不可欠なことだと筆者は語ります。
2、消えゆく日本のモノづくり
さて、約40億点の日本の衣料品の供給量のうち、国産は何%を占めると思いますか?
想像してみて下さい。
A:40%
B:25%
C:3%
正解は・・・
Cです。
※本作品の出版時期の数値です。現在はそれよりも下回っています。
皆さんの想像より多かったですか?少なかったですか?
私は圧倒的に少なく感じました。
この数値を聞き、真っ先に日本の食料自給率を調べてみました。
学生時代に社会の授業で日本の食料自給率は著しく低くて問題だと習った覚えがあったからです。でも、それが40%近くあるみたいです。
「非にならないくらい深刻な数字やん・・・」率直にそう思いました。
アパレル産業が一世を風靡した際に、
それを支えたのは間違いなく日本の工場です。
商社に勤める私は中国やASEANで受注した商品を生産することがほとんどですが、やはり日本のモノづくりの真面目さと柔軟さは突出していると感じます。
デザイナー達の想いに応え、難しいデザインや少量の発注でも、それを具現化してきたのが国内産地です。
大量生産の為の効率を追い求める海外縫製基地ではそのようなことは受け入れてもらえないことがほとんどです。(それも商品の同質化の一因でしょう)
海外での大量生産から抜け出し、国内産地と再び向き合わなければ、日本のアパレル産業の未来は危ういのではないでしょうか。
3、洋服好きだけではやっていけない
かつては若者の憧れの対象であり、人気職だった販売員も今となっては不人気な職となっています。
「学生時代のアルバイトならいいけど、正社員としてはちょっと・・・」
私がアパレル販売のアルバイトを始めた当初もそんな空気はありました。
労働条件の悪さによる販売員の疲弊が世の中に伝わっているのだと思います。
このような世の中の空気感を変えることもアパレル産業の未来を明るいものにしていく為には必要不可欠でしょう。
例えば、日本のモノづくりと再び向き合い、消費者に求められる服を作り上げることが出来たとして、それを消費者に上手く伝えれる販売員が存在しないことには業界としての再建は成立しません。
人材育成を含め、販売員の労働環境を改善することも間違いなく大切なことです。
長くなりましたが、本日はここまで!!
次回は第2章「戦後のアパレル産業の勃興から黄金期までの歩み」についてです。