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【書籍解説】 現役商社マンが語る!!「誰がアパレルを殺すのか~第4章~」

 

 

こんにちは。

ふく たびおです。

 

今回で「誰がアパレルを殺すのか」の最後の解説記事になります。

 

 

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第4章~業界の既存ルールに捉われない新興企業~についてです。

画像にある章の表題の通り、今回こそ正真正銘の明るい内容です。

 

第3章では「外」からのイノベーションについてお話でした。

それに対し第4章は「中」からのイノベーションにつ いての内容です。

 

 

 

 

 

1、TOKYO BASE

 

 

"STUDIOUS"や"UNITED TOKYO"の名前は皆さん聞いたことあるのではないでしょうか。

あるいはお店に行ったことがあるという方も少ないでしょう。

 

同社はそのユニークとも言える経営方針で急成長を遂げ、注目を集めています。

そのユニークさの最たる例が原価率でしょう。

それをお伝えする前に、皆さんは一般的なアパレル企業の原価率はおおよそどれくらいだと思いますか?

A:20~25%

B:40~45%

C:60~65%

 

 

 

 

 

正解は・・・

 

 

 

 

 

Aです。

 

 

本作品にも記載されている数字ですが、おおよそその通りかと思います。

※あくまで一般的な数字であり、業態や企業によって当然差はあります。

 

 

それに対し、TOKYO BASEでは原価率を50%と設定しています。

例えば1万円のシャツがあるとします。

 

その原価として使えるのは、

■一般的なアパレル企業 (原価率20%):2千円

■TOKYO BASE (原価率50%):5千円

同じ値段であれば後者の方がより良いものを手に入れることが出来るのが明白です。

 

では同社はなぜそのような各社よりも高い原価率で運営が出来るのでしょう。

主な理由は以下の2つです。

 

1つ目は、自社商品の生産を国内工場で行うことにこだわりを持っていることです。

中国等の海外で生産するのに比べてリードタイムが短いく、例えばシーズンの直前で流行したものにも対応が可能であることが主な理由です。

 

2つ目は、販売員の給料体系です。

通常の給料に各種インセンティブが追加される仕組みとなっています。

中でもユニークなのが、スーパースターセールスに認定されれば売上の10%がそのまま給料としてもらえることでしょう。

 

それらを土台とし、定価で売り切ることを前提にモノづくりと販売を行っていることが他社よりも高い原価率を実現出来る要因と言えるでしょう。

消費者にとってもよりお値打ちにより良い商品を手にすることは嬉しいことです。

 

 

 

2、ミナペルホネン

 

 

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女性の方はご存知の方も多いブランドかもしれません。

長年使える"特別な日常着"をコンセプトとした商品で数多くのファンがいます。

 

同ブランドはそのモノづくりや販売のスタンスさにおいて、強いこだわりがあります。

モノづくりおいて他社と一線を画すのは、全ての商品を生地から手掛けていることだ。

その生地は人気が高く、生地の切れ端を購入する人もしばしばいる。

販売についてはセールをしないということが特徴である。

同ブランドのコンセプトにある通り、長く使えるということが大命題の1つであり、シーズンで売れ残るという概念が無い為だ。

 

 

また、縫製時に余った生地でボタンやバッチやバックを生産している。

実は生地は全体の7割弱しか使われず、残りは裁断後に廃棄されてしまう。

同ブランドはそのような生地を活用し製品をつくったり、端切れとして販売している。

実際にこの端切れはとても人気があり、集めている人がしばしばいる。

私自身も会社の事務さんに頼まれ、何度か出張のついでに端切れを買いに行ったこともあるくらいだ。

 

"こだわりを持ち時間をかけてモノづくりをし、それを大切に販売していく。"

そのような信念を持ち、多くの人に愛されているブランドである。

 

 

 

3、パタゴニア

 

 

アウトドア好きなら知らない人はいない程の有名ブランドである。

 

同ブランドの最大の特徴は環境保護に重きを置いた経営方針と言えるでしょう。

 

 

商品に出来る限りリサイクルなどのエコ素材を採用するように努めている。

今の世の中はエコブームだが、特に日本の企業では最終的に採用されないケースがしばしばある。コストが高くなることが主な理由だ。

 

例えばリサイクルの場合、「再生利用なのになぜ高くなるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。

再生利用の過程での洗浄等の工程が必要なことが原因である。

まだその物量も大きくはなく、ルートが整備されてない為に割高になるのが現状だ。

 

多くの企業が「コストが合わないなら・・・」とエコ素材の使用を諦めることがある。

そのような状況下でも、エコブーム到来のかなり前からエコ(環境保護)を貫いている。

 

 

また、同ブランドは修理サービスにも力を入れている。

商品を修理して長く使ってもらえるのは消費者にとってはいいことだが、アパレルブランドとしては新しい商品を買ってもらうということと相反する部分がある。

消費者に喜ばれること」と「環境保護」を大切にした結果だろう。

環境破壊が進む中、いずれは新品をつくるだけのビジネスモデルはいつか限界を迎えると考えているからである。

 

 

4、最後に

 

 

計5つの記事で「誰がアパレルを殺すのか」について自身の経験を通した意見を交えながら解説を行ってきました。

実例を挙げながら長々と解説しましたが、要約すると以下の通りだと考える。

 

"業界の過去の成功に捉われ、その悪しき慣習から抜け出すことが出来ない多くの企業は苦戦を強いられている。

しかし一方で、そのような慣習に捉われず「消費者が喜ぶこと」を判断基準としている企業から新たな成長への可能性が垣間見える。

きっと流れを変えるなら今しかないということだ。"

 

 

最後までご覧頂きありがとうございました。

解説と言いながら、どうしても自分の意見のような文章になってしまう箇所が多く悩みました。少しずつ改善していけたらと思います。

 

アパレル業界について、解説して欲しい本や内容があればリクエスト頂ければと思います。自分の知る範囲内で勉強しながら解説させて頂きます。

 

 

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