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【書籍解説】現役商社マンが語る!!「誰がアパレルを殺すのか~第3章~」

 

こんにちは。

ふく たびおです。

 

前回に引き続き「誰がアパレルを殺すのか」の解説記事となります。

 

今回は第3章~IT系など業界の外からアパレル産業に参入する新興勢力~についてです。

 

前回までの章ではアパレル産業の負の要素ばかりに焦点が当てられてきました。

絶望しかけてた方は安心して下さい。今回から少しずつ可能性が見えてきます。

 

 

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1、ECストアとオンラインSPA

 

 

新興勢力の1つ目はECストア(いわゆるインターネット通販)とオンラインSPAです。

 

ECストアについては説明するまでもなく、ご存知かもしれません。

ZOZOTOWNAmazonに代表される業態です。

本作品では主にZOZOTOWについて、その繁栄までの過程が記されています。

 

今となってはその取扱いブランドや売上高が膨大なZOZOTOWNですが、その道のりは決して楽なものではありませんでした。

まず最初のハードルとして、世界観(デザインだけでなく価格まで含む)の異なるブランドと一緒に商品を並べられることに難色を示すアパレル企業が多かったようです。

 

例えば、グレーのニットを探している消費者がいたとします。

ZOZOTOWNで検索する場合には「グレー ニット」等のキーワードでの検索が可能ですよね。

 

すると2万円もするニットと5千円程度のニットが同時に表示されます。

消費者は当然、その中から自身が欲しいものを選ぶのです。

それを嫌うアパレル企業が多数を占めていました。

 

ここで考えて欲しいことは「どちらが消費者に喜ばれるか」です。

 

 

ECストア以降、新たに広がりつつあるのがオンラインSPAである。

わかりやすく極端に言うと「工場でつくった商品を店舗を介することもなく、消費者へ届ける」業態と言えるでしょう。

 

その中でも、その運営方法や考え方のユニークさが取り上げられているのがアメリカのEvertlane「エバーレーン」です。

 

一番大きな特徴はその透明性である。

Everlane「エバーレーン」は生産過程を開示しているだけでなく、各過程でのコストや同社が得るマージン(利益)までも開示しているのである。

 

「Chose what you pay」(いくら払うかあなたが決めて下さい) といういわゆるセールの方法もとてもユニークだ。

 

例えば、2万円で売っていたジャケットがあるとします。

上記セール期間中、消費者はその商品の値段を以下の3つから選択するのです。

①1万5千円

②1万2千円

③1万円

 

③は原価で、 これを選択すると会社に利益は残りません。

それでも①や②を選択する消費者の割合が多いと聞いたことがあります。

 

インターネット通販による膨大な顧客や販売のデータを保有するZOZOTOWNAmazonのような企業が自ら洋服の製造を始め、かつEverlane「エバーレーン」のように消費者の心を掴むようなユニークな方法で販売を行うようになったら、業界に対する影響は計り知れないでしょうね・・・。

 

 

2、二次流通とサブスクリプション

 

 

二次流通という表現ではピンとこない方が多いかもしれません。

しかし、それは皆様の多くが知っているものです。

例えば、ZOZOUSEDやメルカリ等がそれにあたります。

 

 

「着なくなった私物を古着屋に持ち込んで売る」という行動は以前からもあったかと思います。ここで注目したいのはメルカリのような個人間で行われる二次流通です。

 

メルカリはそれまで個人売買の絶対王者だったヤフオクからその地位を奪ったといっても過言ではありません。

ヤフオクからオークション要素を省いたことに絶対的違いがあります。

 

メルカリの普及を機に「中古で売ることを前提に新品を買う」という考え方がより多くの人に広まったことでしょう。

それは「売り先があるから、新しい服を買いやすい」という表現にも言い換えれます。

 

「数回しか使わないのに新品を買うのはもったいない」や「子供服等の着れる時期が限定的なものに新品を買うのはもったいない」といったような

消費者の悩みを解消し、喜ぶ仕組みが二次流通なのです。

 

 

そのような悩み応えるもう1つの業態がサブスクリプション(以下サブスク)です。

いわゆる定額制のサービスですね。

Amazon PrimeNetflixの定額動画配信サービスがポピュラーでしょうか。

アパレル産業の場合は定額制のレンタルサービスであることが多いでしょう。

※あくまで定額制のサービスなので、その内容は多岐にわたり得ます。

 

例えば、ファッション系のサブスクで有名所であればメチャカリがあります。

 

服を「買う」から「借りる」流れを広く普及したのがファッション系のサブスクのサービスです。

 

これは例えば、「平日は仕事で忙しく、休みの日に洋服の買い物に時間と労力をかけたくない。その時間をもっと他の趣味にあてたい」などの悩みも解決します。

要するに、限られた時間で価値を効率良く得ようという思考です。

 

3、カスタマイズ

 

 

アパレル業界程、色/デザイン/サイズなどに対する好みが細分化されている業界も少ないことでしょう。

 

きっと消費者の中でも「もっと自分好みの服があればいいのに」と思う方も少なくないはずです。また、その好み(ニーズ)の難易度も人それぞれです。

自分のニーズを求める気持ちが強い人ほど、その難易度が高いことがしばしばあります。

 

カスタマイズとはそんな人たちの気持ちに応える為のサービスです。

一番皆さんに聞き覚えのある言い方だとオーダースーツでしょうか。

今やイージーオーダーといわれるように、オーダー商品のハードルもかなり下がっています。

 

このような中で新たに活用されているのがnutte「ヌッテ」というサービスです。

自分がどのような洋服をどれくらいの予算で作りたいかを書き込み、手を挙げた複数の職人の中から自分の条件に一番合う職人と契約を結ぶ。そして出来あがった商品が手元に届くという仕組みである。

※似たような仕組みで「シタテル」がありますが、「ヌッテ」の方がより個人向きかと思います。

 

 

以上の3つのサービスに共通していることは「お客様の悩みを解決したり、喜ばせていること」であろう。

 

第2章までで解説した通り、消費者はもうただ洋服を買う為にわざわざ売場まで足を運びたいと思ってはいない。

 

いつも新品だけを買いたいなんてことはほとんどなく、中古品を売買することにも興味を持ち出している。

 

これらの外からの新興勢力に促進された消費者の変化に目を向けず、今まで通り新品を大量に売場に並べているだけでは消費者から見向きもされなくなるだろう。

 

 

IT業界発の外からきた新興勢力はアパレル産業に新たなイノベーションをもたらした。

それは同時にアパレル産業がまだ成長する可能性が「消費者と向き合うことにある」と示してくれている。

 

 

今回もつい長くなってしまいました・・・。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

 

次回は最終の第4章「業界の既存ルールに捉われない新興企業」についてです。

 

 

 

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