【書籍解説②】現役商社マンが語る!!「鎌倉シャツ 魂のものづくり~第2章~」
こんにちは。
ふく たびおです。
前回に引き続き「鎌倉シャツ 魂のものづくり」の解説を行っていきます。
今回は第2章~100%リスクを取る~です。
ここで言うリスクとは売れ残りのリスクと言えるでしょう。
では、同社はどのようにしてこのリスクを100%請け負っているのでしょうか。
1、返品無しの全品買取
見出しを見て「え、そんなこと当たり前じゃないの?」と思った方もいるでしょう。
残念ながら、アパレル業界ではそれが当たり前でない部分があります。
※もちろん、当たり前に出来ている会社もあります。
"製品は必要な分だけ倉庫から出荷し、その度に支払いを行っていく。
そしてシーズンに売れ残った分は来年にまた販売すると持ち越し。
しかも、その保管料はメーカー負担。"
上記のようなことを行っている企業も少なからずあるのが現状です。
資金力のある商社ならまだしも、中小企業が多い国内工場やアパレルメーカーがそれをされたら間違いなく経営は立ち行かないでしょう。
それに対し鎌倉シャツは全品引き取り、仕入れの翌月に現金で支払う。
今や売掛金や受取手形による決済が主流かもしれないが、中小企業にとってみれば回収サイトが短くなるのは助けになるだろう。
また、同社の仕入れに対する教えの1つに「価格交渉に電卓を持っていくな」という言葉があるようです。
とは言っても、本当に持っていかないわけではありません。
"取引で大切なことは相手の考えや事情をよく聞き理解すること。それをせずにセカセカと計算をしてしまうようであれば、電卓は持っていくな"ということです。
これは本当に大切なことだと思います。
私も仕入先と価格交渉をする際に「このデザインを無くせば少し工賃が落とせる」など提案を頂けることがあります。
デザイン変更の可否を得意先に確認してみると、実は全然こだわりのポイントでもなかったようであっさりとOKをもらえるなんてこともしばしばありました。
交渉となると"自分の要望を通す"ことに重きを置きがちになりますが、"相手の要望を受け入れる"ことですんなりと進むことも稀ではありません。
2、安定的に発注を出し続ける
鎌倉シャツと取引を行う工場の方のインタビューにこんな発言が記載されていました。
「ありがたいのは毎月発注があること。しかも、生産の2カ月前には発注書が届くので予定が立つ」
安定的に発注を続けることで工場側は発注が切れる心配が無くなり、ものづくりに集中出来るのだ。
同社が一貫してこの姿勢貫いていることは、本書の工場スタッフのインタビューから見て取れる。
2つ目のリスクは、この安定的発注に潜んでいるものだ。
安定的に発注を出す(=商品を生産し続ける)以上は、安定的に商品が売れないといけない。店頭の商品が売れていかなければ、在庫が増えていくリスクがある。
しかし、同社は90%以上の消化率を脅威の数値誇るとされている。
もう少しわかりやすいように見方を変えましょう。
日本で1番売る店舗の東京 丸ビル店は年3.9億を売り上げるとされている。
例えば、仮に全て¥6,000の商品だとすると以下のような販売数量となる。
■年間販売数量:約65,000枚
■1日あたりの販売数量:約178枚
丸ビル店の大きさは約50㎡ (約28畳)とそう大きくはない。
好立地とはいえ、それだけの販売額や量を叩き出すのは驚異的と言わざるを得ない。
この販売力こそが安定的に発注を出し続けるリスクを取れる要因です。
その販売力はどこからきているの?という話は本章以降になります。
3、まとめ
以上のようなリスクを100%受けながら、鎌倉シャツは仕入先と共に成長をしてきたと言える。それは本書に記されている以下の一節からも感じられる。
"仕入先が無ければ、我々の商売は成立しません。仕入先も重要な顧客であり、常に相手の立場や利益を考える。"
"利は元にあり"という言葉があります。
中にはその意味を「得意先に高く売ることだけでなく、仕入先から安く仕入れることで利益を生む」と勘違いしている人がいます。
正しくは「仕入先を大切にすることが自身や得意先の最終的な利益となる」という意味です。
確かに前者の解釈も言葉の理屈としては通るかもしれません。
しかし、例えば仕入先から安く仕入れることばかりを求め相手に無理をさせ続けた結果、仕入先が倒産してしまったら自分も得意先も困るはずです。
目先の利益ばかりを求めて仕入先に無理を強いていては必ずその代償が返ってきます。
鎌倉シャツはその言葉の真意を身をもって体現しています。
商品の良し悪しだけでなく、そのような考えた方も私が同ブランドのシャツが好きな理由です。
今日も長くなりましたが、以上です。
次回は第3章「会社と社員に嘘はない」です。